こんにちは ツナカン です。
公認心理師として
不登校のお子さんや
子育てに悩む親御さん
学校の先生方
の応援をしています。
お子さんが不登校になると
保護者の方はとても心配されます。
そんな時でも,見通しがついていれば
少し落ちついてお子さんの様子を見ることもできます。
これについて以前にも記事にしています。
【不登校支援】「行きたいけど行けない」不登校回復への7段階
今回は
不登校の回復段階パート2
について解説します。
この記事を読むことでこんな方がわかります。
- 不登校回復の8段階
- 回復の要因
- 回復の段階は方位磁石のようなもの
お子さんが学校に行きたがらなくなったり
不登校になってしまったりして
これから,どうしたらいいの!?
そんな気持ちになったときに
こんな見通しがあれば
少しでも安心できると思います。
その安心感がお子さんにも影響しますから
知っておいて損はないはずです。
不登校回復の8段階
お子さんが不登校になると
親御さんはかなり不安になります。
それは当然です。
支援者であっても,見通しがつかない支援は
不安になります。
ですから,この回復の段階は保護者ばかりでなく
支援者にとっても重要なものです。
回復段階の具体的な内容は以下の通りです。
- 第1期:身体的愁訴の段階
- 第2期:不登校の合理化の段階
- 第3期:不安・動揺の段階
- 第4期:絶望・閉じこもりの段階
- 第5期:あきらめ・自己探索の段階
- 第6期:回復の段階
- 第7期:学校復帰の段階
- 第8期:完全な回復の段階
以下に解説します。
第1段階:身体的愁訴の段階
頭痛・腹痛など体の不調を訴える時期です。
不定愁訴とは原因不明の体調不良のことです。
この時期,親も子どもも体の調子が悪いのだと思っていて
不登校の始まりであることに気づかない時期です。
なんだか,学校のことを考えると調子が悪いなぁ…
そんな感じでしょう。
この段階では,何か大きなきっかけがあるなら
現実的な解決で不登校を予防できるかもしれませんが
お子さん自身も自分の変化に気づいていない場合には
親御さんはお子さんの様子をうかがわざるを得ないでしょう。
第2段階:不登校の合理化の段階
この頃は
親や医師が,
子どもの体の不調は心理的な原因
と考えるようになり
不登校を疑い始めます。
子どもは学校について不満を述べ
学校に行けないのは学校や友だちのせいだ
と言います。
身体的な不調を無視することはできませんが
”何ができるのか“ を親御さんだけではなく
お子さん自身が考えることも重要なことです。
色々聞き出すのではなく
親自身が,子どもが考える呼び水になるのが良いでしょう。
第3期:不安・動揺の段階
この段階では
体調不良は学校に行かないための言い逃れだ!
と子どもを責めて学校に行かせようとします。
家庭は登校をめぐって緊張し
子どもも落ち着きをなくしていきます。
親は病院や専門機関で援助を求める一方で
家庭内暴力が起きることもあります。
やればやるほどお子さんは頑なになり
状況が悪くなっていきます。
第4期:絶望・閉じこもりの段階
脅かしたり,すかしたり,学校に行くようにお願いしたり
色々と試してみても自体は悪化していく。
親子ともに絶望しますが,親はあきらめずに
子どもの具合の良い時を見計らって登校を促します。
子どもは落ち着かず家の中から,学校に関するものが
どんどんなくなっていきます。
そして,家に引きこもり始め
2~3年続くこともあります。
この時期は最も辛い時期になるでしょう。
保護者の方の気持ちを支えていくのが
支援者の中心的な課題になるでしょう。
第5期:あきらめ・自己探索の段階
絶望の時期を通り過ぎ
親は1~2年くらいは回復にかかるだろう
と覚悟を決め,それとともに家の緊張が次第になくなっていく。
一方,子どもは好きなことに熱中しながらも
過去の自分を振り返り始め
なんでこんなことになったんだろう…
と考えるようになります。
支援者やその周辺の人が
うまく親御さんを支えられれば
迷いの中でも徐々に光が見えてくるのでしょう。
第6期:回復の段階
子どもは生活の中で落ち着きを見せ始め
家族が学校について触れても嫌がらず
時には話題に乗りさえします。
乱れた生活リズムや,身だしなみなど
徐々に回復を見せ始め
隠していた制服や教科書などが見えるようになります。
親御さんが腰を据えることで
お子さんも変化を見せ始めるということなのでしょう。
第7期:学校復帰の段階
4月・9月・1月の学期初めや修学旅行などの
学校行事をきっかけに,専門機関や学校に復帰します。
行ったり休んだりの散発的な復帰から
徐々に日数が増え,最終的に完全に学校に復帰します。
適応指導教室で勤務していると
この時期にあるように思われるお子さんが
利用を始めることがあります。
第8期:完全な回復の段階
完全に不登校から脱して,健全な生活をするようになる。
親も子どもも学校に行けなくなるかもしれない
という不安から解放される。
不登校を通して親子が成長した瞬間なのでしょうね。
不登校からの回復の要因
周りの人はどうしてあげらこんな風に回復するの?
と思われるかもしれません。
斎藤(1999)は不登校から回復の要因に
- 腹を据えた親の支持
- それに守られて子どもの心の再建が一定水準まで進んだこと
- 外部の情報が適切な量とモードで途絶えることなく伝えられていた
- 適度な高さのハードルたる社会的活動の場がタイミングよく出現
- その活動との結びつきを仲介してくれる人や機関の存在
を挙げています。
シンプルに言うと
周りの人たちが子どもに合わせてつながりを持ち続けたこと
といっても良いでしょう。
回復の段階は方位磁石のようなもの
ここまで読んでくださった方の中には
本当にこんな風に進むの?
と思うのではないでしょうか。
それはその通りで
必ずしもこんな風にうまく進むとは言い切れません。
また
今どの段階だかどうやったらわかるの?
と思われるかもしれません。
私の立場からしても
今第~段階なので…しましょう
とはなかなか言いにくいようなものです。
研究者・心理職が
お子さんや保護者の方と関わる中で
こんな風に進んでいる感じがする…
という大まかな流れだと考えると良いでしょう。
私が関わるお子さんについても
その時どの段階にあるのか
正直なところ断言することはできません。
なぜなら,お子さんや親御さんが置かれている状況は
もっともっと複雑だからです。
ただ,真っ暗な道をさまようよりは
地図や方位磁石があれば行きたいところには近づけます。
そんなつもりで回復の段階を見てみれば
お役に立つのではないでしょうか。
まとめ
今回は以前の記事に引き続き
不登校の回復の8段階について解説しました。
- 第1期:身体的愁訴の段階
- 第2期:不登校の合理化の段階
- 第3期:不安・動揺の段階
- 第4期:絶望・閉じこもりの段階
- 第5期:あきらめ・自己探索の段階
- 第6期:回復の段階
- 第7期:学校復帰の段階
- 第8期:完全な回復の段階
です。
必ずしもこんな風にきれいに進むわけではありませんので
期待のし過ぎは注意しなければなりません。
しかし,行ったことがない場所も地図や方位磁石があれば
行きたいところに近づくことができます。
こうした情報が
保護者の方とお子さんの
地図になれば幸いです。
ご意見やご質問は以下までどうぞ。
引用
高岸幸弘・井出智博・蔵岡智子(2018)これからの教育相談‐答えのない問題に立ち向かえる教師を目指して,北樹出版
斎藤万比呂(1999)不登校だった子どもたちのその後.こころの科学87,日本評論社,pp81-87.
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