適応指導教室とフリースクールのちがい5つ

不登校支援

こんにちは ツナカン です。

公認心理師として

子育てに悩む保護者の方や

不登校のお子さんの

支援をしています。

現在,お子さんが不登校になったときの受け皿は

主に適応指導教室かフリースクールです。

 

お子さんにそういう場所を勧めようとしたとき

 

適応指導教室とフリースクールって何がちがうの?

 

とか

 

え!?適応指導教室ってフリースクールのことじゃないの?

 

 

そんな風に思われていることは少なくありません。

 

また,そういう疑問がわかったとして

じゃあ,適応指導教室とフリースクールどっちがいいの?

 

そんな疑問が浮かぶと思います。

 

そこで,今回は

適応指導教室とフリースクールのちがい

についてお伝えします。

 

この記事を読んでいただければ

こんなことがわかります。

 

1.適応指導教室とフリースクールのちがい5つ

2.適応指導教室・フリースクールはどんなニーズに合うのか

3.選ぶ時の決め手

4.適応指導教室とフリースクール,注意したい点

 

フリースクールと適応指導教室のちがいがわかれば

学校に行かない,行けないお子さんにとって

よりよい選択肢を選ぶことになるし

将来も変わるはずです。

また,親御さんの迷いも軽くすることができます。

 

 

 

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適応指導教室とフリースクールのちがい5つ

適応指導教室とフリースクールにはこんなちがいがあります。

  • 設置主体と設置数
  • 費用
  • 学校との連携
  • 対象
  • 職種

 

 

その①:設置主体と設置数

適応指導教室を設置しているのは

ほとんどが教育委員会(行政)です。

2011年時点で全国に約1257か所あると言われています。

運営予算は,

自治体の人口規模や不登校に対する考え方によって左右されます。

人口規模が大きくなくても,不登校に対する前向きな取り組みがあれば

予算をつけて,人員や人材も充実します。

私の勤務する適応指導教室は,この点では全国水準との比較では良い方だと思います。

 

フリースクールを設置しているのは

NPO団体(民間)が5割,次に多いのが任意団体で3割です。

つまり熱意のある方が個人的に運営をはじめ

NPO法人を取得,あるいは法人格に至らずに

運営しているということです。

出典 本山(2011)日本におけるフリースクール・教育支援センター(適応指導教室)の設置運営状況より引用

 

平成27年(2016)年の全国フリースクールネットワークの調査では

NPO法人は5割弱,任意団体は約2割となっています。

フリースクール全国ネットワーク(2016)小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査の結果(概要)より引用

 

調査の仕方によって数値は変わりますので

この傾向に大きな変化はなさそうです。

 

運営基盤が不安定なところが多く,ホームページなどがありながら

活動の実態がないNPOなどもあり

活動を休止しているフリースクールがネット上に

今でも存在している可能性があります。

2011年時点で全国に約436か所程度あるようです。

出典 本山(2011)日本におけるフリースクール・教育支援センター(適応指導教室)の設置運営状況より引用

 

他にフリースクール全国ネットワークでは

平成27年(2016)時点で 474件 のフリースクールを対象に調査を行っています。

こちらも,調査対象の選定の方法によって変わるので

全国的な増加があるのかは不透明です。

 

ついでにNPOの運営状況についても触れておきます。

フリースクールの予算状況については以下のように

NPOの約3割と,フリースクールの4分の一は赤字 であることが示されています。

出典 本山(2011)日本におけるフリースクール・教育支援センター(適応指導教室)の設置運営状況より引用

 

 

またNPO・フリースクールの寄付金額は50万以下が大半を占めています。

出典 本山(2011)日本におけるフリースクール・教育支援センター(適応指導教室)の設置運営状況より引用

 

このように余裕のある運営を行っているところはほとんどありません。

適応指導教室も決して潤沢な予算はありませんが

それでも潰れない程度の予算は安定して用意されます。

しかし,NPOや民間のフリースクールは予算が不足すれば廃止されてしまいます。

 

一方で,さまざまな努力で事業を維持拡大しているところもあります。

私の知っている方でも事業を拡大しているところもあります。

 

その②:費用

適応指導教室は基本的に無料です。

ただし,行事などはその都度費用がかかることがあります。

一方のNPOは月会費の約90%が五万円未満であるようです。

出典 本山(2011)日本におけるフリースクール・教育支援センター(適応指導教室)の設置運営状況より引用

 

その③:学校との連携

設置主体が教育委員会である適応指導教室では

学校との連携はフリースクールに比べるとスムーズです。

情報交換や教師の訪問,課題の一本化など

行政ならではのサービスが提供できます。

 

一方,フリースクールは民間であることから

必ずしも連携がスムーズでないことがあるようです。

先にあげたように運営主体や経営基盤が不安定なフリースクールに対して

学校やお子さんの個人情報のやり取りを含む連絡・連携は

情報の保護の観点から難しいのが現状です。

行政や学校が情報を出しにくかったり

民間だからこそ提供できる取り組みが

必ずしも学校の方針にそぐわないことがあるからでしょう。

その場合は,ご家庭の責任において

情報提供を行うことが求められます。

 

その④:対象

適応指導教室は主に義務教育のお子さんが対象です。

高校生はアフターケアとして短時間の関わりはあっても

義務教育の頃のように手厚くかかわることは少ないでしょう。

一方,フリースクールは

高校生くらいまでのお子さんが対象となります。

また20歳くらいまでのお子さん(?)を対象にする

フリースクールもあるようです。

 

知人のフリースクールでも学校教育ではできない教育法で

お子さんの個性に応じた支援を行い

有名大学に送り出したケースもあります。

 

その④:職種

適応指導教室は,スタッフのほとんどが教育系資格保持者

であり,まれに心理職がいます。

詳細はリンク先の記事をご覧ください。
適応指導教室のスタッフのなり方

 

一方のフリースクールはスタッフの背景は多様なようです。

こちらについては統計的な情報は手元にないので

先の述べたフリースクールの財政状況と

私の知りうる範囲の情報が材料になりますが

心理の専門職が採用されていることは稀なようです。

心理資格保持者はスタッフの中にいるかもしれませんが

フリースクールの財政状況を見れば

学習支援を兼務するマルチな働き方になるでしょう。

また,臨床心理士・公認心理師の採用には

それなりのコストがかかりますので

心理資格といっても民間の心理資格保持者だったり

学会レベルの資格保持者かもしれません。

 

 

 

適応指導教室・フリースクールはどんなニーズに合うのか

こんなご家庭やお子さんのニーズは

適応指導教室との相性はよさそうです

  • 心理的ケアのニーズが高い
  • 家庭が学校との連携に前向き
  • 規則正しい生活をしたい
  • 行けなかったとしても学校との繋がりが欲しい
  • 比較的近い年代の交流が欲しい
  • 可能な限り安価でサービスを受けたい
  • 数年内で社会的自立の見通しを付けたい

 

自治体によって職員配置がちがっていたり

勤務時間や開所日数などもちがうので

ひとくくりには言えないのですが

フリースクールと比べると

心理職が配置されている可能性が高いので

心理支援の必要性が高いお子さんには

適応指導教室の方が良いでしょう。

 

また,学校との連携がしやすいのも特徴ですので

学校を意識して生活していくことが必要であれば

年代が近いお子さん同士が集まったり

学校に復帰することが念頭にある適応指導教室がよいでしょう。

何よりもほとんどの適応指導教室では

その自治体に住んでいる方は無料になるのも強みです。

 

一方,以下のようなニーズのご家庭・お子さんは

フリースクールとの相性が良いのではないでしょうか。

  • 学校に縛られないカリキュラム
  • 自由度の高い生活
  • 広い年齢層の人との交流
  • 長期間の支援

 

民間だからこそ自由にできる支援があります。

日課についても自由度が高いところが多いようです。

対象年齢も広いため,長期間の支援が受けられます。

適応指導教室で勤務する私としては

卒業後は関わることが難しいため

どうしても中学校の間に

子どもたちにはっぱをかけなければならないし

やや無理のあるプランを提案せざるを得ないこともあります。

それが子どもたちや保護者を追い込むリスクもあると思っています。

 

ご家庭で金銭的・時間的ゆとりがあるのであれば

長期間の支援を受けながらいろいろな価値観に触れ

離れたところで学校について考えてみる経験を積むのもありだと思います。

 

 

 

選ぶ時の決め手

では決め手は何なのでしょうか

先にあげた向き不向きなどを参考にしてもらいながら

実際に見学・体験をした上で

  • お子さんの意志
  • ご家庭の養育の方向性
  • 支援機関(適応指導教室・フリースクール)の機能

この三つを見極めてください。

どれが抜け落ちてもダメです。

 

お子さんの意志はもちろん大切ですが

それだけで決めると

保護者やご家族が葛藤することになります。

また支援機関にない機能を期待すると

お子さんもご家庭も失望することになります。

 

実際に私の経験でも

お子さんの納得が不十分な状態で来ることになり

親に連れて来られた

とお子さんは話し,支援が続かないことはありました。

このような場合には支援したくても受け入れてもらえないので

期待するような応援をすることはできません。

 

 

 

適応指導教室とフリースクール,注意したい点3つ

注意したい点は

  • 学校との連絡・連携は必要
  • 教育委員会はフリースクールより適応指導教室を優先する傾向
  • 生活リズム

 

 

その① 学校との連絡・連携は必要

たとえ適応指導教室やフリースクールに行けることになっても

学校との縁を切ることはデメリットが大きいです。

学校は教育の他,子どものセーフティネットも兼ねています。

万が一,お子さんや家庭に何かがあった場合

学校が察知できなくなり,結果的にお子さんに

重大な事件や事故になる可能性があります。

また中学生になれば受験も控えています。

 

また進路の事項決定や書類関連は基本的に学校に集まります。

こうした情報網から漏れた結果はすべて家庭・お子さんに

不利益となって跳ね返りかねません。

 

その② 教育委員会はフリースクールより適応指導教室を優先する傾向

適応指導教室とフリースクールが同じ自治体にある場合

教育委員会の立場としては

公的機関である適応指導教室を優先する可能性がある

と思います。

それは差別じゃないの!?

そう思うかもしれませんが

経営地盤の不安定な民間のフリースクールより

公的資金で安定して運営されている適応指導教室の方が

秘密保持であったり,とぎれない支援をする上では

信頼性が高いということです。

 

先にお示しした通りフリースクールの多くが赤字経営です。

お子さんの個人情報を持ったまま

フリースクールが潰れてしまうということだってありえます。

その後の責任は教育委員会もとれないのです。

出典 本山(2011)日本におけるフリースクール・教育支援センター(適応指導教室)の設置運営状況より引用

 

 

その③ 生活リズム

適応指導教室でもフリースクールでも

ご家庭の中に入って一緒に暮らすことはできません。

家庭訪問や相談に乗ることはできても

直接的に生活の改善をすることはできないのです。

適応指導教室でもフリースクールでも

結局,生活の改善は家庭でしてもらう他ないのです。

ネット依存などで著しく生活が乱れてしまってたり

家庭内で荒れた状況が見られるのであれば

児童相談所や医療に相談し

一時保護や施設入所,入院などの方法も必要です。

 

 

 

まとめ

今回は

適応指導教室とフリースクールのちがい5つ

を紹介しました。

 

適応指導教室は,フリースクールと比較して短期間で社会的自立を促す場所

フリースクールはより自由で長期間支援が受けられる場所

そんな風に考えてもらえたら良いのではないでしょうか

 

また,決断については

お子さんの意志,養育方針,支援先の機能

この三つを見極めてください。

 

この記事が,適応指導教室・フリースクールの利用について

迷っている親御さんや,お子さんの

お役に立てば幸いです。

ご意見やご質問はここからどうぞ。

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参考・引用 

・本山敬佑(2011)日本におけるフリースクール・教育支援センター(適応指導教室)の設置運営状況.東宝九大学大学院教育学研究科研究年報,第60集,第1号.

・フリースクール全国ネットワーク(2016)小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査の結果(概要)

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