先生!それ“親の愛情不足”じゃないですよ!

子育て

こんにちは。

 

公認心理師のツナカンです。

 

ふだんは,教育支援センター(適応指導教室)で

 

学校に行けないお子さんや

 

子そだてに悩む親ごさん

 

学校の先生方の

 

こころの支援をしています。

 

先生方の相談に応じていると

 

よくある見立てとして

 

こんなものがあります。

 

 

~さん(子ども)が…なんです。

 

でも,きっと親に甘え切れていないから

 

だと思うんです。

 

だから,もっと愛情を与えてあげないと

 

良くならないんだと思うんです。

 

 

先生だって,自分がうけもつ

 

子どもたちに対して

 

愛情を向けている人たちです。

 

私は,苦労しながらも

 

お子さんたちに愛情をむけている

 

先生方の様子を想像しつつ

 

 

その“愛情”はどんな風に伝えますか?

 

 

 

と聞いてみます。

 

すると

 

 

特別に話す時間をとってみたり

 

一緒に作業をする時間を

 

もってみたりしています。

 

 

親御さんにも

 

スキンシップをとってもらうように

 

すすめています。

 

 

これは小学校の先生に多いのですが

 

中学校であれば,

 

 

親子で話をする時間をもっと

 

もってもらえるように

 

お願いしています。

 

 

こんな返事をもらうことが

 

けっこうな数あります。

 

 

これをうけて親御さんも

 

ご家庭で一生懸命

 

お子さんと関わろうとします。

 

しかし,これは

 

“愛情不足”のワナ

に落ちてしまっている状態なのです…。

 

 

 

愛情をかけることの

 

何がワナだっていうの!?

 

 

そんな風に思われるでしょう。

 

ですから

 

今回はその疑問について

 

解説していきます。

〇この記事のポイント

・“愛情不足”のワナとは?

・“愛情不足”のワナの脱出方法

 

 

 

 

 

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先生!それ“親の愛情不足”じゃないですよ!

子どもが学校で

 

何らかの問題を表出するようになると

 

親からの愛情不足

 

が,うたがわれることが多くあります。

 

 

 

これはかなり大きな問題です。

 

何が問題なのかというと

 

抜けだせない迷路への入り口

 

になるからです。

 

 

 

この “愛情起因説” は,かなり根深くて

 

いくつかの問題を引き起こします。

  • 具体策が限られてしまう
  • 頭が固くなり解決が遅れる
  • 燃えつきるリスクが上がる
  • 時間・心理的なコストが上がる
  • 親を追い込む
  • 親との対立関係になる

 

以下に一つずつ説明していきます。

 

 

 

 

①具体策が限られてしまう

このワナに落ちると

 

「愛情をかけないと,子どもは変わらない」

 

と思い込むようになります。

 

愛情とはどうすることなのでしょうか?

 

少なくとも暴力ではないことは確かです。

 

他には?

 

しつこく言ってきかせることでしょうか?

 

自分が上司から同じようにされたら

 

きっと関係は悪くなるでしょう。

 

 

それではスキンシップでしょうか?

 

でも今のご時勢,先生がそんなことをしたら

 

問題になりかねません。

 

 

 

だから,親にお願いするしかない…

 

他には?

 

授業で特別扱いすること?

 

しかし,それでは他の子どもからしたら

 

浮き上がってしまうし

 

自分の都合よくふるまうように

 

なる可能性も高いです。

 

 

 

こんな風に,

 

型にはまったような方法しか

 

見えなくなってしまうし

 

効果をうたがうようなことを

 

続けることになってしまうのです。

 

 

 

②頭が固くなり解決が遅れる

この“愛情不足”の思考は

 

合理的なアドバイスを受け入れにくくさせます。

 

世の中には

 

“愛情とはかけがえのないもの”

 

というイメージが強く定着しています。

 

もちろん,一部はその通りでしょう。

 

それゆえに,合理性とは相いれないものと思いがちです。

 

しかし,冷静になってもらえればわかるはず…

 

愛情は “たくさん持っているか” ではなく

 

どう伝えるか

 

が大切なのです。

 

わたしはコンサルテーションに入る前に

 

この考え方を先生方に理解してもらえるように

 

伝えねばならないのですが

 

受け入れてもらうだけでも

 

少なくない時間が必要になることがあります。

 

“愛情”はもはや概念というよりも

 

宗教に近いのかもしれません。

 

 

 

 

③燃えつきるリスクが上がる

先ほどのように

 

対応が型にはまると

 

行きづまるのも簡単です。

 

そして見通しもないまま

 

同じ対処をくりかえさなければなりません。

 

そして,やっぱり結果は出ません。

 

今度はそこに “指導力不足” という

 

言葉がもれなくついてきます。

 

あとは焦燥感,そして…

 

燃え尽きがやってくるのは

 

時間の問題といえるでしょう。

 

 

 

④時間・心理的なコストが上がる

先生方は通常業務だけでも

 

かなりのエネルギーを使っているはずです。

 

そこに,ケース会議や

 

わたしたちのような機関への相談

 

という仕事が増えていきます。

 

わたしたちは,相談されたことに

 

答えを出せるわけではなく

 

整理をしたり,見立てをしたりと

 

ご一緒に考えるのが仕事です。

 

感謝をしてもらえるのは嬉しいですが

 

結果的に,先生方の負担は増えている

 

そんな風にも言えるのです。

 

 

 

⑤親を追い込む

多くの親が愛情をこめて

 

子育てをしているはずです。

 

それにも関わらず

 

問題が起きている…

 

親からすれば

 

 

愛情はかけているはずなのに

 

どうして悪いことをするのだろう…

 

 

そんな風に考えます。

 

ですから,親は必死になって

 

家で子どもを叱るでしょう。

 

しかし,学校でいい子になるかどうかは

 

別の問題です。

 

親が家庭で子どもを叱りつけることで

 

親子関係は悪化します。

 

ときどきは

 

「先生が親に話すと,家で怒られるから」

 

という理由で

 

学校でおとなしくすることがあります。

 

しかし,これは反省ではなく

 

単に隠しているだけのことです。

 

結局,

 

先生と,親の間で共有しているのは

 

「愛情=いい子」

 

という暗黙の通念だけであって

 

具体策は共有できていないのです。

 

 

 

⑥親との対立関係になる

ここまで読んでいただいて

 

先生と親は

いっしょに考える関係ではなく

 

オーダーしあう関係 になっていることが

 

ご理解いただけるでしょうか。

 

これがわからないということは

 

まだ,愛情のワナにつかまっていることの

 

表れだと言えます。

 

 

先生

愛情が不足しているので問題が起きているのだと思います。

 

ご家庭でもっと愛情をかけてください。

 

やってみたけどうまくいきません。先生どうしたらいいのか教えてください

 

 

先生

まだ愛情が不足しているのでしょう。もっとかけてください

 

 

今まで以上に,

 

愛情をかけてみたのですが

 

どうですか?

 

先生からも

 

もっと関わってもらえませんか?

 

 

先生

まだ落ち着いていません。愛情をかけてください。

 

 

こういうことになります。

 

この状態を 循環論 と言います。

 

これをくり返しているとどうなるか…

 

保護者は

 

 

これだけやってるのに,

 

先生はクレームばかりつける!

 

と怒るでしょう。

 

また,先生も

 

 

親の愛情のかけ方が悪い(足りない)

 

育て方をまちがえている。

 

今まで甘やかしすぎているせいだ。

 

 

などという思考になりがちです。

 

実際,文部科学省でも

 

子どもの学校での問題は

 

保護者や,子どもの特性に

 

見出しているようなデータを示しています。

 

 

こうして,先生と親の関係は

 

悪くなっていくのです。

 

 

 

 

“愛情不足”のワナから抜け出す方法

では,どうすれば

 

“愛情不足”のワナ

 

から抜け出せるのでしょうか。

 

それにはこんな方法があります。

  • “愛情”を行動で定義する
  • 問題行動が起きる仕組みを整理する
  • 具体策をできるだけ多く出しあう
  • トライ&エラーをくりかえす

 

 

 

①“愛情”を行動で定義する

 

「愛情」とは美しいようですが

 

かなり抽象的な言葉です。

 

くり返しますが

 

愛情は量ではなく,伝え方が大切です。

 

どんなに深い愛情を持っていたとしても

 

暴力で伝えたら虐待です。

 

これはゆるぎない事実です。

 

わたしは,愛情は多くなくても良いので

 

方法をまちがえていなければ

 

子どもは健康に育つと考えています。

 

アタッチメント理論をもとに考えると

 

「愛しているから叩くんだよ」

 

といいながら育つのと,

 

たとえ口数が少なくとも

 

困ったときには,

 

助けてもらえる経験が多い子では

 

「愛しているから叩くんだよ」

 

などと言われて育てられる子の方が

 

精神的な弱さを持つと言われています。

 

しつこくくりかえします…

『愛は,量よりも伝え方』です。

 

子どもにとって,どんな伝え方なら愛情が伝わるのかを

 

先生と,保護者でアイデアを出し合いましょう。

 

自分がどう伝えるかではありません。

 

どういう方法ならば子どもに愛が伝わるのか

 

が肝心です。

 

 

 

②問題行動が起きる仕組みを整理する

例えば,子どもが教室で走り回るとします。

 

それを,子どもの発達の偏りだとか

 

親の愛情のせい,親のしつけのせいにしてしまうと

 

先生が解決する糸口は見つかりません。

 

そんな時には

  • どんな時に
  • 子どもが何をして
  • どうなるか

 

に注目をします。

 

すると,先生が教室でできることが

 

見えてきます。

 

先生は,

 

子どもが走り回る前の状況と

 

走り回った後の結果を変えることで

 

走り回ることをある程度

 

コントロールできるのです。

 

これを 三項随伴 と呼びます

 

走り回る前には,

 

勉強がわからなくなっていたのかもしれません。

 

それならば,その子に応じた

 

わかりやすい課題を与えれば

 

走り回ることが減るかもしれません。

 

また,先生に怒られても

 

走り回るのをやめないとしたら

 

先生に怒られるという結果は

 

注目というご褒美なのかもしれません。

 

それならば,あえて

 

走り回っているのを無視するとか

 

走り回る前に注目してあげることで

 

走り回ることが減るかもしれません。

 

ただし,これもいくつかの例の一つにすぎません。

 

 

 

③アイデアをできるだけ多く出しあう

学校のケース会議や

 

保護者との相談では

 

結論ではなく,アイデアをできるだけ多く出し合う

 

のがおススメです。

 

結論を出してしまったとたんに

 

思考は停止してしまいます。

 

このアイデアを出し合うという作業そのものが,

 

話し合いをした人同士の

 

結束力を高めてくれます。

 

そして,できれば子ども自身を

 

その中に入れてあげてほしいと思います。

 

すると,大人だけで決めたルールに

 

子どもが従うのではなく

 

子ども自身ができることが見つかるし

 

より実効可能なアイデアが出てきます。

 

何しろ,子ども自身が言うことなのですから。

 

 

④トライ&エラーをくりかえす

よくありがちなパターンとして注意したいのは,

 

子どもに約束させる

 

というものです。

 

そのようなスタンスは

 

大人側の気持ちを固くさせます。

 

ですから

 

子どもが,アイデアを実行できるかどうか試してみて

 

できなければ,他のアイデアを試してみる…

 

そして,それがどの程度実行できたのか

 

また,試してみる。

 

そんな風に,トライ&エラーをくり返しているうちに

 

より良い行動を選べるようになります。

 

このトライ&エラーをしてあげることそのものが

 

子どもに愛情を伝える方法の一つです。

 

 

親の“愛情不足”のワナから脱出した先生の話

 

ある子が言うことをきかず

 

授業中に反抗したり,

 

触ってはいけないものを触ったりして

 

注意しないわけにはいかなくなりました。

 

 

何回,注意してもなかなかやめません。

 

時には大きな声で注意しなければなりませんでしたし

 

授業もいちいち止めなければならず

 

正直,うんざりしていました。

 

 

 

そして,それは親がきちんと

 

子どもを注意できていないからだと思っていました。

 

 

また,自分が注意したときには

 

子どもはニヤニヤしていたので

 

きっと,大人の注意をひきたくて

 

わざとそうしている,

 

つまり,愛情が足りないんだろうと思いました。

 

 

 

親には,クラスの状況を伝えて

 

家でも小さなことでほめてもらえるよう

 

お願いしました。

 

 

 

それでも子どもは変わりませんでした。

 

保護者は『ほめるようにしています』

 

と言っていましたが

 

本当はちゃんとやっていないんじゃないか…

 

そんな風に考えていました。

 

 

 

そこで,校内でスクールカウンセラーも入った

 

ケース会議を行いました。

 

その中で,

 

子どもが注意をひくものを減らすこと

 

そして,少しくらいのことはムシしてみてはどうか

 

そんなアイデアが出されました。

 

 

 

最初は『悪いことを許してしまうことになるのではないか』

 

そんな風にも思っていました。

 

 

 

とりあえず一週間,試してみたところ

 

前よりも反抗することが減った気がしました。

 

今度は,静かに座っていられる瞬間に的をしぼって

 

ほめてみることにしました。

 

 

 

正直,最初は

 

『今まで手を焼かされたのに何でほめなきゃいけないんだ…』

 

そんな風に思いましたが

 

形からでも入ってみることにしました。

 

 

 

すると,少しずつ座っていられる時間が増えました。

 

また,いろいろ調べてみると

 

苦手な授業時間ほど,ふざけることが多いことが

 

わかってきました。

 

 

その時間は,他の子や支援員さんに

 

手伝ってもらうことを認めました。

 

すると,ふざけることも,反抗することも

 

減ってきました。

 

 

 

保護者にはこんな変化を伝えました。

 

すると,家でもほめてもらえるようで

 

子どもは以前よりも,楽しそうに学校に来るようになりました。

 

今では,家庭では自然に愛情を伝えてくれているようです。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

こんなサクセスストーリーある?

 

そう疑いたくなるかもしれませんね。

 

判断はお任せしますが

 

これはいくつかのケースをミックスした事例です。

 

 

 

まとめ

今回は

 

子どもが学校にうまく適応できない時に

 

先生がおちいりがちな

 

“親の愛情不足”のワナ

 

についてご紹介しました。

 

例え親の愛情不足だったとしても

 

先生ができることはあります。

 

先生とは,それだけ可能性を持った

 

偉大な存在だと,わたしは思います。

 

 

 

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