こんにちは。
公認心理師のツナカンです。
ふだんは,教育支援センター(適応指導教室)で
学校に行けないお子さんや
子そだてに悩む親ごさん
学校の先生方の
こころの支援をしています。
カウンセラーという仕事は
未だミステリアスなイメージがあるのか
こんな風に言われます…
頭がよさそうですよねぇ
いえいえ,仕事柄,勉強はやめられないだけです。
それだけ勉強していると心が見ぬかれそうですよねぇ
いえいえ,ご期待にそえず申しわけありませんが,それができないんです…
え~、そうなんですか!?
というやり取りは
未だにけっこうあります。
ほんとうに見抜くことはできないのですが
わたしの場合は
心を見ぬく(推測)よりも,
やる気を出してもらうアプローチ
の方が好きです。
カウンセラーという仕事は
どのフィールドで働くかによって
仕事の内容はけっこうちがいます。
そして,なかなかに人気のある仕事です。
特に思春期くらいのお子さんからは
将来なりたい仕事にあげられます。
でも,やるとなると,むずかしい仕事です。
あこがれだけではやっていけません。
今回は,わたしも働いている
教育支援センター(適応指導)のカウンセラーの仕事
について
ご紹介します。
この記事を読んでいただくことで
教育支援センター(適応指導教室)で
働くカウンセラーの実際を知り
「これから,カウンセラーになりたい」
と思う人は,
どんな力をつければよいのかわかるでしょう。
今回のポイント
・教育支援センター(適応指導教室)のカウンセラーの実際
・カウンセラーの仕事の内容
・身につけるべきスキル
・必要な資格
不登校に一番近いカウンセラーの仕事とは
教育支援センター(適応指導教室)のカウンセラーは
不登校に一番近いカウンセラーだと言えます。
スクールカウンセラー(以下SC)が一番近いんじゃないの?
と思うかもしれませんが
実はちがいます。
なぜなら,教育支援センター(適応指導教室)のカウンセラーは
SCよりも不登校の子どもたちと
長く,多くかかわるからです。
では,どんな仕事をしているのか…
わたしの実体験や,他の教育支援センター(適応指導教室)の
カウンセラーから聞いた話などをあわせて
お伝えしていきます。
- 不登校のお子さんの学習支援
- 不登校のお子さんの心理支援
- 保護者の心理支援
- 先生との連携
- 先生の心理支援
- いろいろな検査
①不登校のお子さんの学習支援
カウンセラーが勉強を教えるの!?
と,おどろかれることもありますが
適応指導教室で仕事をすると
お子さんへの学習支援は必須です。
所によっては
先生をしていた人や,
教育系の資格をもっている人が
学習支援をして
心理的な支援をカウンセラーがする
というように
分けていることもありますが
人手が多い業界でもないですし
少なくないカウンセラーが
勉強を教えていたりします。
もちろん,教員経験者の方が
教えるのがうまいのは言うまでもありません。
②不登校のお子さんの心理支援
こっちが本業でしょう!
と思うかもしれませんが
心理支援といっても幅は広いです。
いわゆるカウンセリングのような
個室でのやりとりだけをイメージしていると
ちょっとちがいます。
適応指導教室は,生活の場でもありますから
そうした場で,さりげなく心理的なアプローチを
しかけていったり
学習支援の中で,心理教育を行うこともあります。
例えばこのような感じです
勉強につまづき
もうダメだ!どうせできっこない!
という子に
『もうダメだ!』と30秒間できるだけ早くできるだけ多く言ってみて。
もうダメだ,もうダメだ,もうダメだもうダメだもうだ…
どう?
疲れました。でもさっきほどダメだという感じじゃありません
それ以外にも
授業のように心理学の知識を伝えることもあるし
個別での心理面接もあります。
適応指導教室に通うお子さんは
少なからず生活のリズムが乱れていますので
多くのお子さんに生活を整えるような
アプローチをしています。
ふだんは何時ころ寝ている?
24:00~6:00くらいです。
子どもにしては睡眠時間が短いね。
睡眠時間がもっと取れると
やる気がもっと出てきたり
勉強のときに
理解がしやすくなると言われてるんだけど
もっと睡眠時間をとることをおススメしたいけどどう?
はい。でもネットとか見ちゃうんですよね。
寝るときは枕元にスマホは置かずに
遠くに置いておくといいよ。
枕元に置いておくと
睡眠の質が悪くなるとも言われてる。
そうなんですね。やってみます。
こんなやりとりもよくあります。
③保護者の心理支援
保護者の心理支援は
適応指導教室に,
お子さんが通っているか
そうでないかは関係なく行っています。
適応指導教室に通っている場合には
生活上のことや,進路のことなど
その時期になると,さけられないテーマが
中心になりますので
カウンセリングというよりも
話し合いをして何かを決めることが多くなります。
一方,適応指導教室に子どもが通っていない
“外来” の相談の場合には
学校に子どもが適応できないという相談を中心に
子育ての悩みや,親御さんご自身の人生について
お話をうかがうこともあります。
③学校との連携
適応指導教室に通うお子さんは
学校と物理的にも,心理的にも距離があります。
そうなると情報弱者になってしまい
それがますます学校から遠ざけることになります。
ですので,連絡や連携を行います。
例えば,学校からの課題をあずかったり
学校で受けられないテストを
センターで受験できるようにしてもらったり
それから,学校側の支援方針の確認をするようにしています。
この支援方針と,わたしたちの支援方針のすりあわせをして
学校といっしょに,お子さんをどう応援するか決めていきます。
それ以外にも,課題をかかえるお子さんについて
学校に出向いて授業参観をしたり
対応について,心理的な面から
コンサルテーションを行います。
④先生の心理支援
先生だって人間ですから
苦しいこともあります。
特に,先生という仕事は
感情をともないますから
うけるストレスも大きな仕事です。
自分がうけもつお子さんへの対応で困っている時
いち社会人としての,先生方の苦労を
きかせてもらうこともあります。
また,先生は多忙ですので
忙しさのあまりに
自分の気持ちを二の次にしてしまうこともあるようです。
そんな時に,先生方の話をうかがうと
安心してもらえることがあります。
ほかにも,先生向けの講座などや
研修会での講義をとおして
心理的な支援の方法や
情報提供などをおこなうこともあります。
⑤適応指導教室のマネジメント
適応指導教室に通うお子さんは
学力にばらつきがあり
できるだけそれぞれに合わせて
わかりやすくしてあげる必要があります。
勉強がわかるようになると
それだけで自信を持てるようになります。
そのため,教員をしていた経験のあるスタッフの存在は
とても大きいのですが
カウンセラーを含めて
子どもとの相性もあります。
このようなことを考えながら
その日ごとに,対応する職員の
割りふりなどをおこないます。
また,勉強以外にも
行事の企画・立案などもあります。
行事を立てるために
行けそうな場所や
子どもたちの意見にくわえて
その時の子どもたちの状態に
あっていそうな内容を考えながら
行事を立てていきます。
⑥いろいろな検査
知能検査を中心に
各種の検査をおこないます。
それをもとに,学校や家庭と連携したり
相談者をより深く理解するための
きっかけにします。
求められるスキル
このように,カウンセラーといっても
一口に言えるような仕事ではありません。
教育支援センターのカウンセラーは
子どもたちのやる気を高めたり
時にはリードしたり
一方で,保護者や先生など
子どもたちを取りまく大人を
心理的にサポートしたり
提案したり…
時には学校以外の機関との
連携などもおこないます。
かなり幅の広い仕事だと言えます。
カウンセラーなのに,そんな仕事までするの!?
カウンセラーになりたかったけど,思っていたのとちがう
という方もいるでしょう。
それでも教育支援センター(適応指導教室)の
カウンセラーになってみたいという人には
どのようなスキルを身につければ良いのか
お伝えします。
- 心理療法の知識と技術
- 動機づけ
- 中学校レベル以上の学力
- アセスメント力
- 説明力
- 生活力
- 学習意欲
①心理療法の知識と技術
これは言うに及ばず
必須のスキルです。
心理学といっても
よって立つ理論はひとそれぞれ。
とにかく,お役に立てれば
どんな学派でも良いでしょう。
②動機づけ
子どもたち,保護者,先生方は
なかなか見通しのつかない現実に
あきらめかけてしまっていることもあります。
こうした人たちに
希望や方向性をもってもらうことが必要です。
しかし,よくやりがちなのが
言葉で一生懸命はげましてしまうことです。
これは,多くの場合あまり役に立ちません。
はげましは長続きしないのです。
でも幸いなことに,心理学では人のやる気を高める
そんな方法がいくつかあります。
ですから,学派にこだわらず
相手のやる気が引き出せるような方法を
知っておくと良いでしょう。
カウンセラーによっては
自然にやる気が出るのを待ちましょう
という人もいるのですが
わたしは,関われるのも期限があるので
折を見て,動機づけをします。
③中学校レベル以上の学力
心理職は基本的には
大学院を修了している人たちが多いので
この点ではあまり心配はいらないでしょう。
それでも大学で教職課程を卒業した人には
及ばないと考えていますが。
④アセスメント力
アセスメントとは,見立てのことです。
情報を集めて整理することで
その人の良い点と
支援が必要な点を
しぼりこんでいきます。
カウンセラーは,ついつい
心理的な面や,
発達的な課題に目が行きがちですが
環境的な面にも目をむけて
広く情報を集めて
整理していく必要があります。
⑤ 説明力
カウンセラーというと
話をよく聴いて
アドバイスは最小限に…
そんなイメージを持たれていることがあります。
それは第1要件のようなもので
いろいろな人に心理的な知識を届けたり
見立てをわかりやすく伝えたり
いっしょに状況を改善していくために
こういうことがけっこうあります。
⑥生活力
え?生活力?
と思うかもしれませんが
学校は家庭科や公民など
生活にかかわるような教科がありますが
遅れをとりもどそうとすると
どうしても,国語や数学など
主要な5教科を勉強することが
中心になってしまいます。
そこでわずかな時間になってしまいますが
行事の時間などを通して
子どもたちに生活の知識や
方法を伝えるためにも
生活力をためされることが
少なくありません。
ですから,カウンセラーになりたいなら
家事などはどんどんやるべきです。
⑦学習意欲
心理学は毎年のように
ブラッシュアップされていきます。
新しい知識の全部を知ることはできませんが
勉強はしつづけなければなりません。
以前は正しかったことが
次の年には,
正しくなくなっていることだってあるのです。
どれくらい勉強をしているかが
よりよい関係を作れるかを
左右します。
ですので,勉強し続けることを
習慣にしなければなりません。
…なんて、えらそうに書いていますが
わたしも勉強が足りているわけではないのですが…。
必要な資格
カウンセラーといっても
きびしく資格が定められていない場合もあります。
教員経験がある人だったり
教育関係の資格を持っている人だったり。
しかし,心理職はまだまだマイノリティで
そのぶん専門性を活かせる機会があります。
ですので,心理の枠での採用を狙うことを
おススメします。
その場合,
採用に有利な順番から…
- 公認心理師+臨床心理士
- 公認心理師もしくは臨床心理士のどちらか
- その他(学会資格)
こようになります。
もちろん,他の機関での経験など
例外はあります。
教育支援センターのカウンセラーになりました!
学生の頃からカウンセラーになることを
夢見てきました。
自分が子どもの頃,悩んでいた時に
人に相談にのってもらったし
自分も誰かの力になりたいと思ったから。
そのために勉強をがんばって
相談員をしたりしていました。
もちろん,すごく大変だったけど
公認心理師の資格もとりました。
でも,教育支援センターのカウンセラーは
なかなか求人がありませんでした。
スクールカウンセラーをしていた時期もあったけど
やっぱり教育支援センターの
カウンセラーがいい。
なぜかというと,
地域の広いエリアの困りごとに乗れる
それだけ,多くの人の役に立つ
チャンスがあるから。
そして,何年か待っているうちに
やっと求人が出ているのを発見!
迷わず申し込みました。
競争率は高かったけど
今までいろいろなところで
経験をつんできたことが
良い評価になったらしく
採用されました。
思っていた以上に
仕事の幅が広くて
最初のうちは戸惑ったけど
スクールカウンセラーよりも
自分が決めて動けるところも多いし
その分,責任も重いけど
やりがいがあります!
子どもたちや,その周りの大人の人たちが
相談に来てくれて
少しでも前向きに変わってくれると
それが嬉しいです。
問題を解決するのはむずかしいけど
みんなで一緒に問題と向き合えている感じがすると
『やっぱりこの仕事しててよかった』
と思います。
まとめ
今回は
教育支援センターのカウンセラーの仕事
についてご紹介しました。
教育分野のカウンセラーといえば
スクールカウンセラーですが
教育支援センターのカウンセラーは
意外と狭き門です。
今回の記事でもしかすると
圧倒されてしまう人もいるかもしれませんが
着実に,勉強と,経験を積み重ねていけば
狭い門も少しずつ開けてくるはずです。
お問い合わせなどは下記のリンクへどうぞ
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