《先生向け》【登校渋り】子どもを無理やり教室に入れると起きる4つのこと

不登校支援

こんにちは ツナカン です。

公認心理師として

不登校のお子さんや

子育てに悩む親御さん

学校の先生方

の応援をしています。

 

夏休みの終わりが近づいています。

少し古い資料ですが,7~9月の夏休みの時期に最も不登校が増える

ということを示すデータがあります。

文部科学省(2014)不登校に関する実態調査報告書

 

実際,私がふだんの仕事の中で感じている雰囲気とも一致します。

 

お子さんの登校渋りが始まると

 

癖になる前に教室に入れましょう

そう考える先生もいます。

 

そういわれると

 

迷っていた親御さんも

癖になる前に教室に入らせなきゃ

と焦ります。

 

この  “癖になる前に教室に入れる”

という大人側のやり方が

お子さんの状態を悪化させます。

 

これについての私の意見は

登校渋りは癖になりません

です。

 

今回は

  • 「癖になる前に教室に入れてしまおう」と考える先生
  • お子さんが登校渋りになって焦っている親御さん

に向けて

 

登校渋りの子をむりやり教室に入れると起きる3つのこと

 

について解説します。

 

また,その解決のヒントについてもお伝えします。

 

この記事を読んでもらえれば

  • お子さんが登校を渋る理由
  • 登校渋りのお子さんへの対応

 

についてのヒントを得ることができるでしょう。

 

 

 

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【登校渋り】子どもを無理やり教室に入れると起きる4つのこと

 

安易に

教室に入っちゃえば適応できちゃうでしょう

と考えて

多少無理に教室に入れてしまうような対応をすると

こんなことが良く起きます。

  • 先生との関係が壊れる
  • 親との関係が悪くなる
  • 支援機関につながりにくくなる
  • 支援が遅れて不登校になる

一つずつ説明していきます。

 

 

① 先生との関係が壊れる

充分に子どもの理由や事情をくまずに

むりやり教室に入れようとすれば

当然,先生との関係は悪くなります。

教室に入っちゃえば普通にやってますよ

ということもあるかもしれません。

 

しかし,生徒は先生に感謝はしていません。

もっと別な理由でなんとかやれているだけのことなのです。

 

 

② 親との関係が悪くなる

先生と同じく,無理に教室に入れる

親御さんとの関係も悪くなります。

子どもの側から見れば

 

大人がグルになって教室に入れようとしている

そう感じるでしょう。

教室に入っちゃえばそれなりにできているようですよ

ということもあるかもしれません。

しかし,親御さんへの不満がなくなったわけではありません。

 

 

③ 支援機関につながりにくくなる

こうして,先生・親御さんへの不信感が高まっている中で

支援機関につなげようとしても

 

また教室に無理やり入れようとする大人が増える

子どもから見ればそう感じるはずです。

 

支援を始めるにあたっては

子どもの不信感を払しょくすることから始めねばなりません。

 

自分は学校に行けない,大人を困らせる悪い人間だ

とさえ思っていることもあります。

 

こうして単なる登校渋りだったのが

どんどん文脈が歪んでゆき

本質を見失うことになっていくのです。

こうなった状態からの支援はより難しくなっていきます。

 

 

④ 支援が遅れて不登校になる

子どもからすれば支援機関に行くということは

敵を増やすようなものです。

ですから,私が勤務するような

教育支援センター(適応指導)に行きたがらない子は少なくありません。

むしろ多いと言っても良いくらいです。

 

このようなことから,支援が遅れたり

支援をうけつけなくなって

不登校になっていくこともあるのです。

 

 

子どもが2学期に登校渋りになる理由

長い休みの後の学校が面倒なのはわかるけど

だからって教室に入らないでどうするんだ?

こんな風に登校を渋る理由がよくわからないまま

教室に入ることを促してしまうことは少なくありません。

 

当然のことながら,理由はお子さんそれぞれにあります。

ただ,先生の傾向として学校不適応の要因を

家庭や子ども自身に帰結しやすい傾向があります。

 

それは文部科学省の調査にも示されています。

文部科学省 令和元年 児童生徒の問題行動等調査結果公表資料

 

学校が考えている不登校の主たる要因は

本人の無気力・不安 39.9%

生活の乱れ・非行などの要因 9.15%

親子の関わり方 10.2%

 

と不登校の理由の半数以上が

本人と家庭の関係の中で起きていると感じているようです。

 

例えば

  • 家でずっとゲーム・ネットなどをしていて学校がつまらくなったから
  • 生活リズムが乱れているから
  • 放任な家だから

そんな風に解釈しているのかもしれません。

 

しかし,長期休みの間

お子さんの心の中に何が起きているかと言うと

1学期に解決できないままやり過ごしてきた問題の棚上げ です。

そして2学期が始まる頃になると

登校渋りとして現れてくるのです。

 

つまり

子どもの未解決の問題に学校側が気づけていない,不介入のままにしている

ということの表れかもしれないのです。

 

 

登校渋りへの対応のヒント

登校を渋り始めた時の対応として

以下のような順序で介入すること提案をします。

  • 情報収集とアセスメント
  • 相談機関への相談
  • 子どもと会う
  • 段階的に教室に入れるように促す

 

この順序の中で

相談機関への相談が最後になっていることが多く

この時には対応がより複雑になってしまいます。

ですから,

早く相談機関につないで一緒に考える

ことが必要です。

 

また,登校を渋るお子さんにとっては

先生と会うこと自体が登校刺激です。

ですから,まずは教室に入ること,学校に来ることは

脇に置いておいて,悩みを共有するスタンスが最優先です。

 

 

 

登校渋りになった時の対応

先ほどの計画を実行に移していくために

必要なことを解説していきます。

 

 

情報収集とアセスメント

相談機関に早めに相談するためにも

必要な情報を集めていきます。

 

必要な情報は

  • 長期休みの前に子どもがもちこしていた問題の有無の確認
  • 休み中の家庭での過ごし方
  • 保護者の困り感
  • 学校の方針

 

① 長期休みの前に子どもがもちこしていた問題の有無の確認

長期休みの前に持ちこしていた問題がないか

クラスの子どもたち,先生,本人に聞いてみます。

あくまでも情報収集ですので

この時点では登校を促すようなことはしません。

 

 

② 休み中の家庭での過ごし方

休み中にどのように過ごしていたのか

生活リズムの乱れはどの程度か

学習はどの程度していたのか

家族関係でこじれていないか

友だちとの付き合いはあったか

特に近年は,人付き合いがオンライン化していますので

目に見えない付き合いなどもあるのが自然です。

 

 

③ 保護者の困り感

保護者がおおらかに受け止めていることもあります。

また,保護者がすでにどこかに相談していることもあります。

そんな時には子どもも安定していることがあります。

学校の立場としては,家庭の方針を優先すると思われますが

私に言われるまでもなく

ネグレクトなどがないか子どもの様子を目視することは欠かせません。

 

 

④ 学校の方針

職員間で一貫性のある対応が取れるように

共通認識を作りながら

いつ頃に,どうなったら,どんな働きかけをするかなど

プランニング,今後の方針・方向性を決めます。

 

注意点として,

母子分離不安,愛着障害,発達障害,自己評価の低下

などのラベリングは現象を説明しているのに過ぎないので

具体的な対策ではない ことに注意します。

 

学校の方針あると,相談機関に相談を入れた時の

進み方はスムーズになりますし

この作業自体が学校の組織力を上げていきます。

 

 

相談機関への相談

相談機関に相談するにあたっては気を付けたいことがあります。

それは

  • ゼロベースで相談してしまうこと
  • 状況報告レベルになってしまうこと
  • 子どもの何を支援するのか目標を明確にしておくこと

このような相談の仕方をすると時間ばかりかかって

具体的な解決方法を見つけにくくなります。

 

ゼロベースで,状況報告をすると

このような状況なのですがどうしたらいいでしょうか?

という相談の仕方になります。

すると時間ばかりとってしまい

忙しい中でも作った相談時間が無駄になります。

 

また

 

~しようと思うのですが,これは正解ですか?

 

 

という質問も多くうけるのですが

正解かどうかは,的をどこに絞るかによって変わります。

 

背景や実態がよくわかっていない相談機関が

正解を持っているわけではありません。

正解かどうかはやってみなければわからないし

そこにたどり着くために一緒に考えるのが相談機関の役割なのです。

 

 

子どもと会う

学校に来られない子の安否の目視は絶対ですが

会えた時にどうふるまうかは難しいところです。

 

よく,しょっぱなから学校の状況を伝えてしまったり

学校に来られない理由に切り込んでしまったりしがちですが

まずは,問題解決モードではなく

“同じ部屋の空気を吸う”くらいの感覚

で会うのが良いと思います。

 

そんな空気感にお互い慣れてくると

話題を切り出すタイミングが見つかってくるでしょう。

核心に迫る時は

良ければ聞かせてもらえないかな?

といった聞き方が良いでしょう。

 

また子どもも本音を話すときには心の準備が必要です。

 

場合によっては

次に会いに来た時に教えてほしいな

などと時間をおいてみることも良いでしょう。

 

そして,関係が温まってきたら

教室の状況を少しずつ伝えながら

教室に近づいてみることを提案してみます。

 

 

段階的に教室に入れるように促す

子どもが教室に安心して入れるようになるまでには段階があります。

自分が想像しているようなネガティブなことと

実際に教室で起きることが違っている

と肌で実感できるようになるまで

段階的に確かめるプロセスが必要です。

 

そのために放課後登校等の部分登校や

保健室や空き教室などの別室登校を

提案するのも良いでしょう。

【不登校の前に】保健室登校の5つのメリットと3つのデメリット

 

 

先生、これはやめといて!

 

登校渋りのお子さんに対して

先生,これはやめておいた方がいいです!

と思うことがあります。

 

先生には先生の事情もあるでしょう。

正解はやりながら見つけるものです。

しかし,明らかにやめておいた方が良いということがあります。

  • 一方的に情報を提供する
  • 教師のペースで教室に入れたり時間を延長したりする
  • ラベリングをして解決したつもりになる
  • 子どもに動機づけをしない

 

こうした対応の背景には

いわゆる “回避=甘え思想” があると感じます。

つまり

嫌なことから逃げるのは甘えだ

という思想です。

 

一昔前であれば,子どもの人権よりも

教師の権威の方がはるかに上にありましたので

こうした考え方が通用していました。

 

しかし,現代は子どもの権利の考え方が浸透しました。

今では “回避=甘え思想”は機能的ではなくなったのです。

 

 

一例として

教室に無理やり教室に入れられた子のその後を

いくつかのケースをミキシングしてご紹介します。

 

小学生の頃から学校に行くのが嫌になった。

 

友だちとの関係がこじれたのがきっかけだった。

 

その時,担任の先生にはうまく説明できなかった。

 

教室にいると調子が悪くなるからよく保健室に入った。

 

休み時間になっても具合が良くならないから

 

保健室にいたら,担任の先生がやってきて

 

「教室に行くぞ!」

 

って言いに来る。

 

それでも動かないと,ベテランの先生まで来て

 

「入っちゃえばなんとかなるから行こう!」

 

ってほとんど強制的に連れていかれた。

 

ベテランの先生が来ると,迫力があって

 

よけい自分の気持ちとかは言えない。

 

大人に囲まれて怖かった。

 

教室に入っても何も変わってないからずっと調子が悪かった。

 

しばらくは頑張ってたけど,夏休みになったら

 

ポカンとして,夏休みの終わり頃には朝起きられなくなった。

 

そのまま学校には行けなくなった。

 

先生は応援してくれてるというよりも

 

自分の担任のクラスがうまくまとまらないのが

 

嫌なだけだったんだと思う。

 

今でもその先生のことを思い出すとムカつく。

 

 

 

登校渋りの子への対応のヒント

仕事柄,不登校のお子さんの対応に苦慮している先生にお会いします。

逆に,不登校のお子さんとの関係をうまく作れた先生にもお会いします。

 

そんな先生の関わり方を見ていると以下のような特徴があります。

登校渋りの子への対応のヒントとなるのではないでしょうか。

  • 動機づけをしている
  • とにかく早くほめる
  • 文脈を変えている
  • 関係性を変えている

これだけではわかりにくいと思うので一つずつ解説します。

 

 

動機づけをする

教室に入れたら

その子にとってどんなメリットがあるのか

困難を乗り越えることによって

どんな成長が見込めるのかを説明します。

 

子どもによってはトークンエコノミーのように

表にシールを張るような視覚的な方法で

成長を実感できるような工夫も良いでしょう。

 

 

とにかく早くほめる

心理学では 60秒ルール と言われる考え方があります。

増やしたい行動をしたらとにかく早く褒めろ

ということなのです。

登校渋りをしている子が教室に入れたら

できるだけ早くほめましょう。

 

しかし,みんなの前であからさまに褒めるのは

難しいこともあるでしょう。

そこで,前もって子どもと打ち合わせをしておいて

ほめサインを決めておきます。

言葉で褒める以外で「ちゃんと注目しているよ」というサインを

送れるようにしておくのです。

 

 

文脈を変える

登校渋りになった子にとって

 

A:クラスメイトがいる時  B:教室に入る  C:ネガティブな体験

という反応を予想しています。

 

ちなみに,このネガティブな体験

実際に誰かに何かをされなくても

子どもの主観的な体験として起きていることも含まれます。

さらに質の悪いことに,この子どもの主観的な体験は

他者がコントロールすることはできないのです。

 

そこで,次にこのようなことが起きます。

A:ネガティブな体験  B:回避・逃避  C:安心

 

こうして回避・逃避することによって

安心感を得ることができますので

よけいに回避・逃避するようになります。

 

 

そこで,教室の環境をコントロールすることで

この予想を裏切る仕掛けが必要 なのです。

 

そこで,先生が介入できるのは

Aの事前の状況と,Cの事後の状況です。

 

特に,Cの事後の状況をコントロールするのがおススメです。

 

要するに

 

教室に入ってみたけど,楽しかった。

 

教室に入ってみたけど,思ってたより嫌じゃなかった

という良い裏切りをしてあげればよいのです。

 

 

関係性を変える

先生との関係性を変えることもお勧めです。

教師というと,つい子どもをリードしてしまいがちですが

そういう役割を一時脇に置いておきます。

 

生徒同士の関係性にも介入できれば良いのですが

子どもとは言え他人ですので,コントロールするには限界があります。

 

一番コントロールしやすいのは先生自身の行動です。

具体的には教師は教室に入ることを前提にしない対応です。

特に子どもの趣味に近づいてみるとか

少し一緒に遊んでみるとか

リードする役割を外して

子どものペースについていくようなイメージです。

 

だからといって,いつもそうするべきだということではありません。

短時間でも良いのでそんな時間を持つことをおススメします。

 

 

 

まとめ

夏休み明けには,例年不登校が増えます。

そんな事態に備え,先生向けに

登校渋りのお子さんへの対応法

についてご紹介・提案してきました。

策がないまま無理やり教室に入れるということは

一か八かのギャンブルのようなものです。

負ければ,先生も後味が悪いですし

何より子どもを傷つけることになってしまいます。

 

新型コロナの影響もあって

今年の夏休み明けは特に不確定要素が多くなるでしょう。

 

GIGAスクール構想に基づく対応で

どこまで対応できるか読めませんが

この記事が少しでも先生方のお手伝いや

登校渋りで苦しむお子さんの力になれば幸いです。

 

ご意見やご質問は以下までどうぞ。
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