こんにちは ツナカンです。
心理師として
不登校のお子さんや
子育てに悩む親ごさん
学校の先生の応援をしています。
学校の先生や親ごさんの多くは
とても忙しく、余裕がないことも少なくありません。
そのためか、しばしば怒ってしまうようです。
怒ってしまったあと、多くの場合は後味が悪いもので
自分のことをイヤになってしまうこともあります。
しかし、中には
![](https://www.tsunaaruki.com/wp-content/uploads/2021/10/怒る女の先生.jpg)
『怒り』は自分中心だけど
『叱る』は言ってきかせることだから
まちがいではないと思うんです。
こんな風におっしゃる方もいます。
さて、これは本当にそうなのでしょうか。
余裕がないとつい怒りたくなってしまう…
そんなときは少なくないかもしれませんが
怒りは使い方を誤るととんでもないことになります。
『叱る』ことで『怒り』を使っているつもりが
いつの間にか『怒り』に飲み込まれてしまうかもしれません。
それほど、『叱る』とはむずかしい感情なのです。
最近ではこんな本も話題になるほどです。
叱る依存が止まらない
今まで読んだ育児系のどの本よりも、自分にはスッと言葉が入ってくる。
叱るのメカニズムが分かりやすく説明されてる。そうだったのか!なるほど!となる。
ほんでタイトルが良い。叱るのをやめよう、とか叱らない子育て、とかじゃないのが良い。とまらないんよ!そうやねん!— きいろ (@ayayuzu5) February 8, 2022
感情的になっていようがいまいがアグレッションであるって本当にその通りよね。村中先生は面白い!https://t.co/dZy5SeN7aC
— S_Adur (@CAJGHFranck) January 22, 2023
今回は
『怒り』はダメだけど、『叱る』はいい?
について書いています。
この記事でわかること
- 『叱る』ことの危険性
- 叱りやすいタイプ
- 叱りたくなったときの予防法や対処法
今より自分を好きになれるヒントがえられるでしょう。
【まぜるな危険】『叱る』が危険なワケ
わたしは 『叱る』も『怒る』も現実的に大きな差はない と考えています。
なぜなら どちらも怒りという感情が根っこにある からです。
むしろ『叱る』は社会的にみとめられそうな飾りがついて
正しいことのように見えます。
その分、よけいに質が悪いとさえ思います。
虐待する親の多くが
![](https://www.tsunaaruki.com/wp-content/uploads/2021/02/-2-e1613518613924.jpg)
子どもが悪いことをしたから
それを正そうとしているんです
こんな風に言います。
こんなケースに関わる先生は
![](https://www.tsunaaruki.com/wp-content/uploads/2021/01/school_class_woman_aseru-e1609743480682.png)
お気もちはわかりますが
ちょっとやりすぎだと思うんです。
という風に怒りにもとづく躾(修正)が
正しくないことをわかっています。
しかし、ひとたび自分が生徒を指導する立場になると
![](https://www.tsunaaruki.com/wp-content/uploads/2021/10/怒る女の先生.jpg)
わたしのは教育なので怒りではなく『指導』です。
子どもになにが悪いことか教えるために
『叱る』ことも必要なんです。
と、自分の怒りを正当化したくなってしまうのです。
このように ルール違反に対して自分が悪役を買って怒ることを
利他的処罰 と呼びます。
これは一見して正しいことをしているように見えます。
しかし社会的な道理と怒りは別に考えねばなりません。
なぜなら、怒りは中毒化するからです。
ですからこの記事では
と定義しておきます。
人は罰を与えると気持ちよくなる
人はだれかに罰を与えると気持ち良くなります。
QUERVAINら(2004)は
- 罰を与えると興奮する
- 脳が興奮した人は,罰のためにより多くコストをしはらう
と言います。
ちなみに興奮する脳のパーツは、報酬系とよばれ快感を感じる場所です。
背側線条体の活性化がより強い被験者は、罰するためにより多くの費用を負担することを厭いませんでした。
ドミニク J.-F. DE QUERVAIN、 URS FISCHBACHER、 VALERIE TREYER、 MELANIE SCHELLHAMMER、 ULRICH SCHNYDER、 ALFRED BUCK、 ERNST FEHR(2004)利他的罰の神経基盤,Science, 305巻、5688号1254~1258頁
ほかにも、関係のない多くの第三者が
やったところで利益はなく、コストがかかるにも関わらず
ルールを守らない人に罰を与えようとする可能性が唱えられています。
多くの被験者が、分配や協力の規範を、コストがかかり経済的利益がないにもかかわらず、またその結果、多くの被験者が、制裁によって経済的利益を得られずコストが発生するにもかかわらず、また、規範違反によって直接的な被害を受けないにもかかわらず、分配・協力規範を行使することを望んでいることがわかった。
ErnstFehrUrsFischbacher(2004)Third-party punishment and social norms.Evolution and Human Behavior,Volume 25, Issue 2, March 2004, Pages 63-87をDeepL翻訳にて翻訳
このように、人はもともと罰を与えるのが好きで
しかも、自分以外のだれかのために罰をあたえようとさえします。
たとえば、クラスで子ども同士がトラブルになり
先生からは、一方の子があきらかに悪いことをしたように感じます。
すると、先生は
![](https://www.tsunaaruki.com/wp-content/uploads/2021/05/-2-e1621303437341.jpg)
悪いことをした子を正しい道に導くためだ!
と怒ろうとするでしょうし
その子がしゅんとした姿を見て
![](https://www.tsunaaruki.com/wp-content/uploads/2021/05/-2-e1621303437341.jpg)
反省したなら、次からは気をつけなさい
というでしょう。
その時の先生の気もちはいかほどのものでしょう…。
おそらくは
「解決できた」「生徒を導くことができた」
という、安堵や、充実を感じるのではないでしょうか。
安堵や充実、これが脳が興奮しているタイミングなのです。
安堵や充実と書くと良いことをしているように思えますが
そのとき脳はちゃんと興奮しているのです。
『叱る』ことのデメリット
ここまで、『怒る』も『叱る』も字義的なちがいこそあれ
生理的には差がないことをご紹介しました。
では心理学的にはどうなのでしょう。
心理学でも罰について、はっきりと反対の意見が出されています。
その理由は以下のようなものです。
- 「体罰」が効果的な学習を促進しない
- 罰によって情動的反応や攻撃行動などの問題行動が生じる
- 体罰に頼らなくても学習をより効果的に進める方法がある
※ この「体罰」には精神的な苦痛もふくまれる
日本行動分析学会「体罰」に反対する声明より筆者が手を加えた
実際に体罰をうけた子は、そうでない子とくらべて
対人関係の問題や、衝動性や自分がされてきたことを再現しやすい
などの報告もあります。
心理学からも罰(叱る)ことは
良いことよりも悪いことの方が多いという意見が
強くしめされています。
叱りたい人の特徴
叱りにつかまりやすい人には
- 怒ることで周りをコントロールできた経験が多い
- 幼少期の葛藤がある(虐待をふくむ)
- 脳機能障害
- 高次脳機能障害
- 月経前気分不安障害
- 認知機能の障害
- 燃え尽きている
- うつっぽい
のような傾向があります。
特に怒ることで他人が自分の言うことを聞いてくれる経験をすると
先にあげたように、脳は興奮します。
つまり気持ちよくなるのです。
すると、怒り中毒になって行きます。
とくに『叱る』は
自分が憎まれ役になって子どものためにしている
という正当性があるように見せますので
自分の中にある気持ちよさを自覚しにくくさせます。
「怒り」を「叱る」に正当化したくなったら
上記のような傾向が自分にないかふりかえると
よりよい方法と出会えるきっかけができたり
もっと良い人生を進むことにつながるでしょう。
叱りたくなったときの対処法
叱りたくなってしまったら
![](https://www.tsunaaruki.com/wp-content/uploads/2022/01/地団太する男の子.jpg)
自分は今、『怒り』たいんだ
という風に受けとめることです。
そして、怒り以外の対処方法を
身の回りにさがして見ることをおススメします。
- 深呼吸
- 助けを呼ぶ
- 水をのむ
- 顔を洗ってみる
こんな方法は手がるにできて効果を感じられるでしょう。
『叱り』はだれかのものですが、『怒り』はその人のもの。
正当化しないで『怒り』と向き合うことで
責任ある大人になれるのです。
まとめ
今回は『叱り』の危険性を中心にご紹介しました。
『叱り』は正さの仮面をかぶった『怒り』です。
他人のためにしているのではなく
自分が怒りたいのだと自覚できれば
もっと別の方法を選ぶこともできます。
この記事が『叱り』で困っている方のお役に立つことをお祈りします。
参考文献
村中直人(2023)<攻撃依存>の視点から「怒り」について考える,臨床心理学133第23回第1号,PP15-19.金剛出版.
Comments