こんにちは 公認心理師のヒロです。
ふだんは子育て支援機関や教育支援センターで
子育て中の親ごさんの相談や
不登校のお子さ
学校の先生などを応援しています。
お子さんが不登校になったり
学校で問題行動を起こす理由の一つには
勉強のわからなさがあります。
中には、そもそも文字を読むことに
苦労しているお子さんもいるのです。
お子さんが文字を読むことに苦労していると
親御さんとしては心配になりますよね。
「うちの子だけ?」
と不安に感じることもあるかもしれません。
実は、文字を読むことは
見たもの(視覚) と 聞いたもの(聴覚) を
うまく組み合わせて理解するという
複雑な作業なのです。
今回は、お子様が「読む」ことをどのように学んでいくのか
そして、もし困難を抱えている場合に
どのようなサポートができるのかを
心理学の視点からわかりやすく解説します。
1.読むことが難しい子の特徴
文字を読むのが難しいお子さんには、
いくつかの特徴が見られることがあります。
それは、目や耳の機能に問題があるというよりも
視覚と聴覚の情報をうまく統合できない
ことが原因であることが多いのです。
具体的には、以下のような状態が見られます。
- 視知覚の問題:文字の形を正確に捉えられない(例えば、左右が反転して見えたり、文字がぼやけて見えたりする)。また、文章を読むときに視線をスムーズに動かせない。
- 聴知覚の問題:音をうまく聞き取れない(例えば、「だ」と「ば」の違いが分かりにくい)。また、聞いた音と文字を結びつけるのが難しい。
- 視覚・運動や聴覚・運動の協応の問題:文字を見てそれを正しく発音できない。また、文章を速く正確に読むことが難しい。読めても、内容を理解できていないことがある。
2.「読む」行動の発達
私たちは、音(聴覚刺激)と 文字(視覚刺激)を
結びつけることで「読む」ことを学びます。
その学習プロセスは、大きく分けて3つの段階があります。
- 標ぼう方略:単語全体を一つのまとまりとして覚え、発音する段階。例えば、「strawberry」を見て「すとらぅべりぃ」と発音する。まだ一文字ずつの対応は理解していません。
- 文字方略:文字の最小単位(アルファベットなど)と音を結びつけて理解する段階。例えば、「S」を見て「エス」または「ス」と発音する。
- 綴(てい)字方略:綴りによって発音が変わることを理解する段階。例えば、「strawberry」と「strawberries」の違いを理解し、発音を使い分ける。
これは、日本語でも英語でもほぼ同じプロセスで進みます。
3.「読む」行動をサポートする7つの方法
心理学の一分野である行動分析学では
言葉の学習を
「音と反応の関係の学習」
と捉えます。
ここでは、その考え方に基づいた7つのサポート方法をご紹介します。
- 方法① 等価関係による理解支援:音(例えば「犬」という音声)に対応する絵を選ぶ練習(聞く理解)。文字(例えば「犬」という文字)に対応する絵を選ぶ練習(読む理解)。
- 方法② 等価関係による命名支援:絵を見て、それに対応する音を発する練習(例えば、犬の絵を見て「犬」と言う)。
- 方法③ 系列的要素(単語)の見本合わせ訓練:聞こえた音の並び(例えば「いぬ」という音)に対応する文字の並び(「いぬ」という文字)を選ぶ練習。また、文字の並びを見て、対応する音を発する練習。この際、単語全体を選ぶ練習から始め、次に単語を分解した文字を並べる練習へと段階的に進めます。
- 方法④ 単一要素(清音、特殊音節)の見本合わせ訓練:一つの文字と音を結びつける練習(例えば、「あ」という音に対応する文字を選ぶ、または「あ」という文字を見て音を発する)。これにより、文字方略の学習を確立します。
- 方法⑤ 流暢性の確立:単語や文章をスムーズに発音する練習。同時に、発音を意味のまとまり(文節)ごとに区切ることを学びます。
- 方法⑥ 語彙の拡張:スムーズに読めて、意味も理解できる単語の数を増やします。
- 方法⑦ 文章理解の促進:知っている単語で構成された文章を読み、内容についての質問に答えたり、内容を要約して話したりする練習。
これらの方法は、育ちの中で無意識に子どもが身につけているし
親もなんとなくお子さんの状況に合わせてやっていたりします。
しかし、この中のプロセスが一部定着しない特性があったり
何らかの理由で経験が不足していることもあります。
こうして一覧にしてみると
ご家庭でもできることがあるのではないでしょうか。
お子さんの読み書きでこまったら…
もしかすると、お子さんが授業中に落ち着かないとか
宿題をするのにものすごく面倒くさがるとか
カンタンそうに見えるのに手こずっているとか
国語の文章問題を極端に嫌がるとか
そんなときは「読む」に困っているのかもしれません。
家庭でやるのがやっぱりむずかしいと思ったら
専門機関に相談することも検討してみてください。
この記事が、お子様の成長をサポートする上で少しでもお役に立てれば幸いです。
(参考文献:山本・澁谷(2009)エビデンスにもとついた発達障害支援応用行動分析学の貢献,行動分析学研究 第23巻 第1号)
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