こんにちは 公認心理師のヒロです。
ふだんは子育て支援機関や教育支援センターで
子育て中の親ごさんの相談や
不登校のお子さんや
学校の先生などを応援しています。
この仕事をしていると時々、学生さんから
仕事についての質問を受けることがあります。
そこで、今日は、未来の心理士を目指しているかもしれない、
またはコミュニケーションに悩んでいる若い世代の方からの、
とても正直で大切な質問にお答えします。
私自身の経験や、日々相談者の方と向き合う中で
大切にしていることを、包み隠さずお話しします。
この記事を読んでいただくと
こんなメリットがあります。
・学生生活をする上で、日常に役立つヒントが得られる
・親ごさんと相談する材料が得られる
【高校生の質問に答えます】心理職の仕事、会話術、大切なこと

Q1:相談者と話すときに、特に気をつけていることは何ですか?
私たちカウンセラーが最も大切にしているのは
「相手が持っている世界観に合わせること」
そして「安心安全な土台」を作ることです。

そのために、私は以下のようなことに気をつけています。
🌿 真の共感と「当たり前化」
まずは自然なあいさつと笑顔からです。
そして、話を聞くときはできるだけ共感しようと努めます。
でも人によって経験することは違いますから共感できないこともあります。
それでも、相手が抱えている感情や状況を
「そんな風に感じるのは、あなたにとって自然なことだよね」
と受け止める「当たり前化」を心がけます。
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これは、相手が孤立していると感じさせないために非常に重要です。
💡「提案」であり、決して「命令」ではない
臨床心理士や公認心理師は専門家ですから
否が応でも「権威性」を持っていることを常に意識しています。

「先生」や「専門家」が言うことは絶対だ、と感じてしまう人もいるからです。
だからこそ、私からの助言は必ず『提案』であることを強調します。

✅ ポジティブ面とネガティブ面を伝える
私たちが何か提案するとき
それが相手の生活にどのような良い変化(ポジティブな面)をもたらし
どのような負担や困難(ネガティブな面)を生む可能性があるか
をできるだけ想定し
インフォームドコンセント(十分な説明と同意)を得ます。

これは、相手の人生の選択権を尊重するためです。
🕊️ 変わりたい自分と、変わりたくない自分
たとえ大きな問題を抱えていたとしても
人は誰でも「変わりたい自分」と「変わりたくない自分」の両方を持っています。

それはカウンセラーも同じです。
ですから私たちは、急激な変化は求めません。
特に「変わりたくない自分」は、不安を抱えていることが多いので
その気持ちをていねいになだめる必要があります。

Q2:人と会話をする上で、特に役立つ心理学の考え方はありますか?
全ての心理学が会話に役立ちますが
日常的なコミュニケーションを目的にするなら
人間性心理学 にもとづく考え方…
特に「共感」と「動機づけ」は非常に役立ちます。

人間性心理学は、「人は誰もが成長する力を持っている」という前提に立ちます。
相手にレッテルをはらず
そのまま受け止め、その人が持つ可能性を信じる という姿勢は
相手の自己肯定感を高め、前向きな行動を引き出すための強力な土台となります。
Q3:心理士を目指した理由やきっかけは何ですか?
私の場合は、生い立ちに関係するものが多いです。
元々、「生き物の役に立つことがしたい」と考えていて、獣医を目指していました。
しかし、当時の社会的価値観や親にしかれたレールを走るのがイヤになり
それと共に学力が下がり、獣医になるのをあきらめました。

“優秀な自分”になることから挫折し、進路が見えない中で
当時まだ珍しかったカウンセラーという仕事を親から聞いたのがきっかけです。

大学に入り、めぐり合えた師匠から
「カウンセリングは人生経験そのものが支援に役立つ」
と聞き、挫折した経験も自分の強みになると知り
カウンセラーになることを覚悟しました。
挫折や遠回りも、人の苦しみを理解する力になる。
これが私の経験から学んだことです。

Q4:高校までに、高校入学してから学び・経験しておくと良いことは?
心理士を目指すかどうかにかかわらず
今しかできない経験をすることが、将来のあなたを豊かにします。
💡 今しかできないことを味わう
今しか味わえない友情、学び、そして部活動など
今しかできないことをしっかりと味わっておくことです。
カウンセリングは生活・人生の縮図なので
あなたのすべての経験が将来の支援に繋がります。

📝 自分を観察する習慣
シンプルで良いので、何か目的を決めて生活記録をつけてみることをお勧めします。
例)目標:カウンセラーになりたい
↓
行動:テキストを1ページ読む 充実度:1~5
こんな風にすると、ネガティブなこともポジティブなことも
分け隔てなく感じ、観察するトレーニングになります。

人との直接的な関りの中で感じたことを大切にする
という習慣は、必ずあなたの財産になります。
🧘♀️ マインドフルネスの実践
マインドフルネスエクササイズを短時間でも良いので入れ込んでみてください。

自分自身を観察する経験は、あなたがピンチの時や
より良い支援をするときに、
自分を俯瞰して冷静な判断 をするための練習になります。

師匠を見つける大切さ
そして、大学に入ったら良い師匠を探すこと。
先生の持っている価値観や手法と
あなたの価値観が合うかどうかは
専門家としてのキャリアに大きく影響します。

Q5:お勧めの本はありますか?
高校生の段階では、難しい専門書は読まなくて大丈夫です。
理解できない本に時間を費やさなくて良いです。
まずは基礎的な心理学の教科書などで良いと思います。
数学が嫌いでなければ、統計の本も知っておくと将来役立ちます。
📖 本を読むときの注意点
今はどんな本を読んでも良いと思いますが注意点があります。
本を読むときの注意点は、テクニックに目が行きがちなので
その根底にある哲学や理論的基盤が説明されているものが望ましいです。
今の私がおすすめする本は以下です。
(画像を押すとリンクに飛びます)
どの本も、読みやすく、カウンセラーになる前に自分をふりかえるための
実践的な内容になっています。
また、通俗的な心理学本(例:HSPや愛着障害、アダルトチルドレンに関する本)
も注意が必要です。
これらを読んではいけないわけではありませんが
これらの概念を推奨するような本の中には
普遍性が乏しかったり、著者によるバイアスが強かったり
理論的な基盤が弱かったりするものが多いです。
ただし、これらの概念を批判的にとらえて
きちんと説明をしているものもありますので
そうした内容を併せて読むことが必要です。
↑こちらはおススメ本です。(画像を押すとリンクに飛べます)
通俗的な心理学の本については
鵜呑みにせず、リテラシーを持って読むことが大切です。

Q6:クラスに気まずい人がいるとき、どうすればいいですか?
それは、とても難しい状況ですよね。
でも、心理学を学ぶ者として、
その人を “良いトレーニング相手” と見ると、学びを得ることができます。

その人と接しているときに、
-
どのような感じがするか?
-
どのような思考がわくか?
-
自分が持っている偏見はないか?
など、自分自身を観察する鏡になるからです。

ムリのない範囲で接することで、大きな学びを得られます。
良い人であろうとか、仲良くしようとする必要はありません。
あくまで「自分自身の心を探求する機会」ととらえてみてください。
ついでのアドバイス
誰かに質問するときにはこんな風に
前もって質問を考えておくことが大切です。
そうすると
カウンセリングはさまざまな要素をその場で判断して
クライアントさんにアドバイスをしなければならないこともあります。
ふだんから思考をまとめておくと、いざという時に役立ちます。

前もって相手に内容を伝えておくことで
相手もていねいに回答する気持ちになります。
また余分な時間を使わないようにすることも
相手への気配りになります。

カウンセリングは限られた時間の中でするコミュニケーションです。
タイムマネジメントが重要になります。
また大学から大学院に進学する時には
先生とコミュニケーションをとる必要があります。
しかし大学の先生は非常に忙しいので
際限のないような会話をする学生だと思われると
あなたが望むような答えを出してくれないかもしれません。
進学する上でも、話をまとめておくことは役に立ちます。
充実した学生生活を!
今回の記事が、あなたの学びや進路を考えるヒントになれば嬉しいです。
あなたの持つ好奇心と優しさは、きっと素晴らしい未来につながります。






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